HIS創業者・澤田秀雄氏を読む(木羅)

●HISの創業者澤田秀雄氏の本「HIS 机二つ、電話一本からの冒険」を読んでみた。創業者といえばIT系のアグレッシブなビジネスマンの印象が昨今強いが、この本の中に登場する澤田氏の場合、趣味趣向から生じた意欲がビジネスにそのまま生かされていている部分があって、どこか心休まる気がする。わたくし自身、学生時代を中心にあちこち旅をしてきただけに、利益率やリスク係数などの観点とは別の次元で、自然に起業の意欲が理解できるのである。おもしろいものである。
●勿論企業経営者としての現実的で力強いアプローチにも魅力はある。格安航空券販売の草創期にパック旅行を販売する総合代理店からの圧力に屈することがなかった点や、飛行機会社がなかなかコンタクトに応じてくれない中で年配者の声色を使ってまで果敢に挑戦し続ける姿勢には、常識を超えたエネルギーがある。一歩間違えば狂人扱いされるかもしれないが、姿勢は常にポジティブである。
●ただこのような腹に力の入る局面において、心のどこかで目の前の困難を愉しむ余裕のようなものが澤田氏にはある。キャラクターであるという以上に、ビジネスそのものに夢や希望を感じている人間の強さのようなものがあるように思う。直接説明を加えてある箇所はないが、文章と文章の間から匂うように伝わってくる。額に汗する価値に不自然さがなく、底流にある自分自身のテーマに沿う者だけが享受することができる喜びのようなものがあるように見える。
●起業して巨額の資産を得るというのも大きな目標にはなるが、お金の使い途や、事業そのものから得られる満足感のようなものを適宜感じ取れるかどうかということも、起業を図ろうとする人々にとって大きな要素であるように見える。大きな石の塊を眺めて、出来上がった後の彫像を思い浮かべながらノミを振るうミケランジェロには、目的的な情熱とノミそのものから伝わってくる振動の手ごたえを愉しむ職人気質な喜びがあったように思う。同質の香りが感じられるという意味で、澤田氏のビジネステーマの選択と実行の過程には多くの示唆材料があるように思った次第である。

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